PoL - 流動する”価値” 〜 PoSとPoLの違いを検証
- PoLの特徴 - Berachainのコアシステム
- Ethereumの強みと課題
- PoSモデルの課題とバリデータ偏重
- PoSモデルにおける課題と、Berachainの新たな試み
- PoSモデルの見過ごされがちな問題
さて、前回の の記事でも少し触れましたが、今回はBerachainをこれだけ際立たせている画期的なシステム、PoLに注目してさらに深堀していきたいと思います。
どうしても、そのキャッチーなキャラクターたち(なにせ、ファウンダーの一人であるSmokey The Beraは、匿名の人物でカンファレンスなどで登壇する際も、クマの被り物をかぶって登壇して話しています:本当です)やコアコミュニティの独特なカルトみでその凄さが薄れてしまっているようなところもありますが、やはりこれまでのクリプト・仮想通貨の歴史の中でも、一つ区切りをつけたことに後年なるであろうと自分も思うくらい、PoL、Proof Of Liquidity(流動性による証明)は画期的なシステムだと思っています。
この記事は、Berachain Foundationの公式ブログに掲載されている Flow of Value: Examining the differences between PoS and PoL - a case for a new paradigm in sustainable incentive alignment at the protocol layerを基に参考にして書いています(翻訳ではありませんが多くを参照しています)
流動する”価値” - Berachain公式ブログより
PoSとPoLの違いを検証 ‐ プロトコルレイヤーにおける持続可能なインセンティブ設計による新たなパラダイム事例

Ethereumの強みと課題
Ethereumは、中央集権的な仲介者なしで、パーミッションレスな分散型金融システムをゼロから構築できるかを試みた実験としてスタートしました。
その結果、ICOで1800万ドルを調達し、他の競合チェーンを大きく引き離して、最もアクティブなDeFiコミュニティとオンチェーンアクティビティを誇る、標準的なスマートコントラクトネットワークへと成長しました。
しかし近年では、モジュラー型テクノロジーや「イーサリアムキラー」と呼ばれる新興のL1チェーンたちの急速な台頭によって、その優位性が揺らぎ始めています。
それでも、現在のブロックチェーン業界において、最も支持されているコンセンサスメカニズムはProof of Stake(PoS)であり、EthereumはPoSがどのように高いレベルで機能するかを示した好例といえます。
BitcoinがProof of Work(PoW)によって、ブロックチェーンの礎を築いたのに対し、PoSは高額なハードウェアを必要とせず、物理的な参入障壁を下げることに成功しました。トークンさえあれば誰でもネットワーク運営に参加できる、トークンファーストモデルが特徴です。
PoSモデルの課題とバリデータ偏重
しかしPoSには、いわゆる「トリレンマ」──セキュリティ、スピード、分散性のバランス──の中で、特定の要素に偏りが生じるという課題もあります。とくに問題となっているのは、ユーザーや開発者といったエコシステムを支える層に対して、十分なインセンティブ(報酬)を直接与える仕組みが存在しないことです。PoSでは、ネットワークの維持に関する報酬の多くが、バリデータに集中する構造になっています。
Ethereumネットワークにおいては、32ETHをステーキングできる者だけがバリデータとして報酬を得る権利を持ちます。一方で、Ethereumは約3000万人ものステーキング参加者と、総額750億ドル規模のバリデータネットワークを築くことに成功しました。
バリデータたちは、自らのステーク資金をリスクに晒しながら、トランザクションの検証やブロック生成を行うことで、報酬を受け取っています。
しかし、その裏で、一般のユーザーはこの報酬サイクルから完全に取り残されており、プロトコルレベルからの報酬を得る手段が存在していません。さらに、PoSイーサリアムにおけるプロトコルとバリデータの関係は「提携」とは呼べないほど断絶しており、プロトコルはバリデータからセキュリティの恩恵を十分に引き出せず、バリデータもプロトコルから直接的なメリットを享受できていない状況です。
PoSモデルにおける課題と、Berachainの新たな試み
EthereumのPoSモデルでは、バリデータとプロトコルのインセンティブが完全に別々で、互いに結びついていません。そのため、共通のゴールに向かってインセンティブを調整する必要がなく、結果として、両者の間にコラボレーションは生まれません。
例えば、プロトコル側は、ホストされているチェーン自体の経済的セキュリティにはあまり関心を持たず、一方で、バリデータ側も、自らのバリデータとしての地位を高めるアクティビティを生み出してくれるプロトコルに、強い興味を持っているわけではありません。
このような状況では、分散型ネットワークに期待される「個々のノード間で自然発生する大規模なコラボレーション」は起きず、解決すべき課題が残されていると言えるでしょう。
インセンティブを活用して協調を促す仕組み自体は、目新しいものではありません。
たとえば、過去の「Curve Wars」──ConvexやHidden Handなどが推進した例──では、トークン経済を通じて、エコシステム全体を動かす試みがなされました。
Berachainは、これら過去の事例から多くの教訓を学び、初めて**「Bribe(賄賂)システム」をプロトコルレベルで標準実装する**L1チェーンを目指しています。
この新しいアプローチにより、バリデータたちは単一のリワードだけでなく、プロトコルからのインセンティブも収益源とし、よりダイレクトな協力関係を築けるようになります。
──「エコシステムにチームワークや一体感がなければ、そもそも何の意味があるのか?」
Berachainは、こうした問いに真正面から向き合おうとしています。
PoSモデルの見過ごされがちな問題
PoSはブロックチェーンのセキュリティ向上に大きく貢献しましたが、あまり語られない小さな問題点も抱えています。
たとえばEthereumの場合、ETHはステーキング(ネットワークのセキュリティ担保)にも、トランザクション支払い(ガス代)にも使われる、いわば単一トークンモデルになっています。
これをよく考えてみると、セキュリティと流動性という本来異なる役割を、1つの資産で無理にこなしていることがわかります。
金融の世界では「流動性がどれだけ重要か」は常識であり、たとえばスターバックスの株式を直接使ってコーヒーを買わないのと同じことです。
(もし現金という便利な手段があるなら、わざわざ自分の「所有権そのもの」を手放してまで支払おうとは思いません。)
つまり、Ethereumのように「セキュリティ確保」と「決済手段」を同じトークンでまかなう設計は、金融環境として見ると合理的とは言えないのです。
ちなみに、ここで例えるなら──
「スタバの株は使えないけど、株主優待券なら使える」
──そんな仕組みを目指しているのが、Berachainのアプローチに近いと言えるでしょう。
次回は、PoLがこれをどうやって解決するアプローチを取っているかを解説します。
TLTR: Beras can’t read - クマでもわかる記事の要点 🐻💡
テーマ:Ethereumの成功とPoSモデルの課題
- Ethereumは中央集権のない金融システム構築に挑戦し、DeFiとスマートコントラクトの基盤を確立した。
- PoS(Proof of Stake)モデルにより、高性能なハードウェア不要で誰でも参加できるネットワーク運営が実現した。
- しかし、PoSにはセキュリティ・スピード・分散性のバランスに偏りが生じやすいという課題も存在する。
- 報酬の大部分がバリデータに集中し、ユーザーや開発者など他のステークホルダーへのインセンティブ設計が弱い。
- プロトコルとバリデータの間にコラボレーションが生まれにくく、分散型ネットワークとしての持続的な成長に課題を残している。
- スタバの株でコーヒーを買うバカはいないが、Bera達は株主優待券を持ってるかもしれない。
結論: かしこいBeraはなぜかスタバのタダ券をいつも持っていた🐻⁉️