〜 Proof of Liquidityが生み出す、循環型インセンティブモデル 〜
- BerachainのProof of Liquidity(PoL)は、ユーザー・LP・バリデーター・プロトコルすべてに報酬が循環する革新的なコンセンサスメカニズム
- 3つのトークン(BERA・HONEY・BGT)が互いに補完し合い、譲渡不可のBGTを中心とした独自の経済圏を形成
- 従来のPoSと異なり、報酬配分の起点がバリデーターではなくユーザーとLPにある点が特徴的
- ネットワークへの貢献度に応じて報酬とガバナンス権が得られる「関与の経済」を実現
- すべての参加者が意思を持って関われる持続可能なエコシステムの構築を目指している
✅ はじめに:PoLの基本をもう一度
前回のその1では、BerachainのProof of Liquidity(PoL)が、従来のPoSモデルの課題をどう克服し得るかを紹介しました。
今回はその続編として、PoLがどのようにエコシステム内で報酬を循環させているのか、そしてトリトークンモデルが果たす役割について掘り下げていきます。
この記事は、Berachain Foundationの公式ブログに掲載されている Flow of Value: Examining the differences between PoS and PoL - a case for a new paradigm in sustainable incentive alignment at the protocol layerを基に参考にして書いています(翻訳ではありませんが多くを参照しています)
🔁 PoLはなぜ循環型インセンティブなのか?
PoLは、ユーザー・LP・バリデーター・プロトコルといったすべての関係者に報酬が流れる構造を持った仕組みです。
PoLによって報酬の流れは「閉じた一部の関係者」から、「誰でも参加できるオープンな循環」へと進化しました。Berachainでは、プロトコルレベルでその仕組みが最初から組み込まれており、特定のdAppに閉じずにあらゆる参加者が一連の流れに接続できる設計になっています。ここで改めて、PoLにおける主要ステークホルダーの動きと相互作用を見てみましょう。
📌 報酬循環の基本フロー:
- ユーザーがアプリやDEXに流動性を提供
- 報酬として譲渡不可のBGTを獲得
- BGTをバリデーターに委任
- バリデーターがプロトコルに報酬を再配分
- プロトコルがアプリインセンティブを提供
- ユーザーが恩恵を受けて再び流動性提供へ…
このインセンティブの輪(flywheel)によって、ネットワーク全体の健全な成長が促されます。
Berachainが提案した、流動性による証明、Proof Of Liquidityは、その経済モデルに関わる全ての利害関係者にインセンティブとして報酬を分配するために考案され構築された、革新的なコンセンサスメカニズムとして提案されました。PoLは、Berachainのセキュリティと流動性を互いに犠牲にすることなく、比例して拡張させていくことを実現しました。分散型ネットワークのセキュリティを強化するにあたって、ユーザーエクスペリエンスと、限界的な成長によりそれに影響を及ぼすようなトレードオフが起きるようなことがあってはいけません。
このPoLモデルは、セキュリティを犠牲にすることなく、ネットワークへのステークに応じて流動性を拡張していける新しいモデルとして考えられていて、このバランスは、ブロックチェーンエコシステム内のすべての関係者に満足が行くようにデザインされた繊細なバランスで成り立っています。
PoLは、単なる報酬配分の仕組みにとどまりません。流動性提供者だけでなく、プロトコル開発者、ユーザー、バリデーター、さらにはそのネットワークの初期段階から関わるすべてのプレイヤーが、経済的な意味で利害を共有し、報酬という形で“共創”できるように設計されている点が本質です。
こうした構造は、既存のPoSやDeFi設計における「貢献しても報われにくい」という課題を大きく改善し、ネットワークの持続的成長を保証する“合意の再設計”として注目されています。
そのトリトークンモデルをうまく活用しBerachainではLP、一般ユーザー、バリデータ、そしてプロトコル、それぞれのニーズに応えることが出来ます。
まずは、これらのトレードオフの繊細なバランスを更に深く理解するために、3つのBerachainのトークンとそれぞれの役割についてみていきましょう。
🧱 Berachainのトリトークン構造: BERA、HONEY、そしてBGT
以下の3つのトークンがそれぞれ異なる役割を担いながら、全体の経済を支えています。
$BERA
メイントークン
(ガストークン)
- トランザクション手数料の支払いに使われる
- Berachainの基軸通貨的な存在
- 自由に送金・取引が可能で、ステーキングにも利用可能
$HONEY
ステーブルコイン
(USD裏付け)
- USDC等のペッグ資産を裏付けとする
- 1:1交換だが、実質的には100:99.9で担保されており値下がりリスクがない設計
- DeFi内での安定的な価値基準
$BGT
ガバナンストークン
(譲渡・販売不可)
- 最重要トークン。報酬の源泉かつネットワークガバナンスの鍵
- 販売や譲渡が不可能
- 基本的には流動性提供(特にBEX)を通じてのみ獲得可能
BGTのBERAへのRedeemは可能だが逆は不可、かつBurnされる(1:1固定レート)
この3トークン構造は、それぞれが機能的に役割を分担しつつ、相互に補完し合うよう設計されています。とくに$BGTは、PoLの精神──報酬と意思決定の一致──を体現したトークンであり、資本を持つ者だけが強くなるのではなく、実際に貢献した者が主導権を持てるという、Web3が目指すべき設計の1つの到達点とも言えるでしょう。
🔍 PoLが実現する、新しい報酬設計のあり方
PoLの革新性は、報酬配分の起点が「バリデーター」ではなく「ユーザーとLP」にあることです。
これにより、PoLでは従来の「バリデーターとプロトコルだけで完結していた報酬構造」が再構成され、
- ユーザーやLPが直接エコシステム形成に関与できる
- ネットワークの成長そのものに貢献することが報酬に直結する
事が可能になります。
従来のPoS:
- バリデーターが報酬の主な受益者
- ユーザーや開発者は受動的立場に留まる
- アプリへの報酬還元は構造的に難しい
PoLでは:
- ユーザーがBGTを通じて意思を持って報酬配分に関与
- LPは報酬だけでなくガバナンス権も得る
- アプリとプロトコルはBGTの流れを意識して行動する必要がある
こうした循環型構造は、ユーザーが一時的な投機や利回りだけを追いかけるのではなく、エコシステムそのものへの“参加と共鳴”を動機とした関わり方を可能にします。
PoLが提供するのは、ただの利回り設計ではありません。トークンを通じてネットワークとつながり、その未来を共に築いていく「関与の経済」です。これこそが、Berachainが提唱する次世代L1の姿であり、PoLというコンセプトが今後他のチェーンに波及していく可能性も大いにあるでしょう。
TLTR: Bera can’t read - クマでもわかる記事の要点 🐻❓️
- PoLは、報酬がユーザー → BGT → バリデーター → アプリと循環する構造
- トリトークンモデル($BERA / $HONEY / $BGT)で各役割が明確化
- BGTは譲渡不可、流動性提供の証でありPoLの要
- 報酬とガバナンスの接続により、誰もが意思とリターンを持てる仕組みを実現
💡まとめ:PoLが示す「関係者全員が報われる」ネットワーク設計
PoLは、単に新しい報酬システムを作り出したのではありません。 それは「トークンがどこから生まれ、どこへ流れるか」という設計を通じて、ブロックチェーンにおける“価値の流れ”そのものを再定義しようとする試みです。
BGTという譲渡不可の報酬トークンを軸に据え、資本の大小に依らず「貢献に応じて報酬を受け取れる構造」をつくったBerachainは、PoLによって:
- ユーザーが意思を持って報酬配分に関われる
- 開発者がBGT経由で持続的にインセンティブを得られる
- バリデーターがエコシステムの成長と共に報われる
〜 そんな“参加者全員がつながり、報われるネットワーク”を目指しています。
次回の「その3」では、いよいよこの設計がどのように機能し、どのように使いこなせるのかを、BribeやBoost、Vault戦略といった実例を通じて深堀りしていきます。