〜BoostとIncentiveが生み出す、ユーザー主導の報酬設計〜
- BerachainのPoLでは、報酬の流れをユーザー自身が「Boost」で決定できる
- Vaultは報酬配分を得るためにValidatorへ「Incentive(旧Bribe)」を提供する
- BoostとIncentiveが循環する「報酬ループ」がネットワーク全体に組み込まれている
- ユーザーはVaultやValidatorを選ぶことで、リターンを戦略的に最適化できる
- PoLは、報酬を“もらう”から“動かす”ものへと再定義した新しい経済設計
8-10 分
✅ はじめに:PoLは「報酬を動かす仕組み」であり、選択の経済である
Berachainが提唱するProof of Liquidity(PoL)は、単なる「報酬がもらえる仕組み」ではありません。
そこには、どこに報酬を流すか、誰に報酬配分の力を与えるかを、ユーザー自身が選択できるという設計思想があります。
これは、従来のProof of Stake(PoS)における「Validatorが報酬を持つ構造」とはまったく異なり、流動性を起点に、報酬と権限が循環するという新しい経済圏の姿です。
今回の記事では、PoLのコアをなす2つの仕組み──Boost(旧Delegate)とIncentive(旧Bribe)──に焦点を当てながら、「報酬を動かす側になる」という新しい参加モデルのリアルな中身を見ていきます。
🔄 BoostとIncentiveのループ構造
BerachainのPoL経済の中心にあるのが、この「Boost」と「Incentive」による報酬の流れです。 この2つの仕組みを通じて、ユーザーの行動が報酬の配分構造そのものを形作るようになっています。
🔸 Boostとは?
- Boostは、ユーザーがBGTを使ってValidatorに委任(割り当て)する行為です。
- テストネット時代はDelegateと呼ばれていました。
- Boostの比率に応じて、ValidatorはどのVaultにエミッション(報酬)を配分するかを決定できます。
- Boostは、報酬の方向を決める=“報酬の舵取り”をユーザーに委ねた構造です。
Boostとは、ユーザーがBGTを使って、信頼したValidatorに“委任”する行為です。
これはPoSにおけるステーキングに近い概念ですが、BerachainではValidatorに「報酬の配分権限」を与える行為になります。
BoostされたValidatorは、自身がどのVaultにエミッション(報酬の発生)を割り当てるかを選ぶことができ、結果としてそのVaultのAPRにも影響を与えます。
🔸 Incentiveとは?
- Vaultがより多くの報酬を得たいとき、ValidatorにIncentive(旧Bribe)を提供します。
- Validatorはその見返りに、Boostされた影響力を使ってVaultに報酬を配分。
- この行動によって、Incentiveが高いVaultほど報酬を引き寄せる力を持つようになります。
一方、IncentiveはVault側のアクションです。
より多くの報酬配分を得たいVaultは、ValidatorにIncentive(旧称Bribe)を提供します。
Validatorはその見返りとして、Boostされた影響力を使い、Incentiveを出してくれたVaultへ報酬を多く配分するよう調整します。
つまり、「報酬を多く欲しいなら、相応のインセンティブを出せ」という非常に市場原理的な設計になっています。
🔁 ループの完成:
このBoostとIncentiveの力学により、以下のような循環が生まれます:
- ユーザーはVaultに流動性を提供し、BGTを獲得
- BGTでValidatorをBoost(委任)
- ValidatorはBribeを受け取ったVaultへ報酬を配分
- VaultのAPRが上昇し、流動性が再度集まる
→ 報酬がループする経済構造
このループが「PoLの経済的心臓部」となっており、ユーザー・Validator・Vaultの三者がインセンティブで結ばれ、報酬の流れを自律的に作り出していくのです。
🧱 PoLが実現する「オープンループ」型経済モデル
PoLが従来のトークン経済モデルと決定的に違うのは、経済の中にループ構造があらかじめ組み込まれていることです。
それにより、報酬の起点も、流れも、分配先も、すべてが開かれている=誰でも関われるという設計が成立しています。
🔸 従来の“閉じた庭”との違い
- CurveのようなveTokenモデルは、1つのプロトコル内でインセンティブループを形成(=クローズドループ)
- BerachainのPoLでは、ネットワーク全体にループ構造が埋め込まれている
- どのプロトコルでもこのループに参加可能、プロトコルもユーザーも対等なプレイヤー
たとえばCurveやBalancerのようなveトークン設計では、プロトコル単体の中で報酬の重み付けやBribe競争が行われる、いわば“自社完結型”の報酬ループです。
それに対してBerachainのPoLは、L1チェーン全体にインセンティブループを埋め込んでいる点で異なります。
これにより、どんなプロトコルでもこのループに接続可能で、dAppであってもValidatorと報酬分配を巡って競争できる立場になります。
ユーザーもまた、1つのアプリだけに閉じず、ネットワーク全体の中で、流動性を提供したい場所・BoostしたいValidatorを選択できます。
🔸 意思の流動性=民主化された報酬
- 報酬をどこに流すかを決めるのは、運営や財団ではなく、BoostとIncentiveの力学
- プロトコルが報酬を欲しければ、Incentiveを提示してユーザーのBoostを得なければならない
→ インセンティブと流動性が、フラットに争われる
この設計の本質は、「誰が報酬の方向性を決めるのか?」という問いに対する答えが、“あなた”であるという点です。
運営や財団が一方的にVaultやアプリに報酬を配るのではなく、プロトコルが自らIncentiveを掲げ、ユーザーのBoostを獲得しようと競い合う。
一方のユーザーも、情報と戦略を駆使して、自分に最も有利な報酬の流れを設計する。
ここにおいて、報酬の流動性は意思の流動性とイコールになっていくのです。
🎯 PoL戦略入門:ユーザーが取れる3つのアクション

PoLの設計では、報酬の行き先がアルゴリズムではなく「人の意思」によって決まります。 つまり、ユーザーの行動がそのまま報酬効率に直結します。ここでは、PoLを活用するうえで基本となる3つの戦略的行動を紹介します。
① どのVaultに預けるか?
- APRだけでなく、Incentiveの有無やBGT効率(1BGTあたりの報酬)を確認
- 「過小評価されているがBribeが厚い」Vaultが狙い目になることも
Vaultを選ぶ際に真っ先に見たくなるのがAPR(年利)ですが、それだけでは足りません。
VaultごとのAPRは、Bribe(Incentive)の有無や量、Boostによるエミッション比率などによって動的に変動しています。
APRが高いVaultでも、BGT効率が悪ければBoostの恩恵が小さいこともありますし、まだBoostされていない“お得な未発掘Vault”が眠っている可能性もあります。
✅狙い目: APRはそこそこでBribeが厚く、TVLが低めの“これから伸びそうなVault”。
② どのValidatorをBoostするか?
- 自分が参加しているVaultに多くエミッションを配分しているValidatorを探す
- 単にAPRが高いVaultを選ぶのではなく、そのVaultに“Boost権”を行使できるValidatorと連携する意識が重要
Boostは、Validatorに「報酬をどこに流すかを決める力」を与えるものです。
つまり、自分が入りたいVaultに多くのエミッションを配分しているValidatorを探すことが基本戦略になります。
Berachainでは、各ValidatorがどのVaultにエミッションを出しているかが可視化されているため、自分の戦略に合う「推しValidator」を選ぶことができます。
さらに、今はあまりBoostされていないが、将来的にBribeを得て化ける可能性があるValidatorを先回りでBoostするといった“先読み戦略”も、上級者には有効です。
③ Bribe(Incentive)の流れを見る
- ValidatorがどのVaultからどれだけBribeを受け取っているか
- どのValidatorが「報酬配分力」を実際に行使しているか
- Vault × Validatorの関係性を見抜くことが、最大リターンへの鍵
Bribe(現在ではIncentiveと表記)とは、VaultがValidatorに対して報酬を誘導するための“お願い報酬”です。そのまま直訳すれば、文字通り「賄賂」です。
この流れを追うことで、どのVaultに資金が集まりそうか、どのValidatorが鍵を握っているかを見極めることができます。
Boostする先を決めるときも、Vaultに預けるときも、この「Bribeの流れ」と「Validatorの挙動」をセットで見ることが、リターン最大化の近道になります。
🔚 まとめ:PoLは「意思」と「戦略」が報酬に変わる時代の入口
Berachainが実装するPoLは、報酬を「選ばれるもの」から「選ぶもの」へと転換させました。
- 報酬がどこに流れるかは、Boostによって決まり
- どれだけ報酬を引き寄せられるかは、Incentiveの強度によって変わる
- そしてその流れを制御するのは、参加者であるあなた自身です
PoLでは、単に「どこに預ければお得か」ではなく、「自分が報酬の流れをどう設計するか」が求められます。
この世界では、動いた人が報われる。ただ“預けて待つ”のではなく、“Boostして動かす”。あなたの意思と選択が、ネットワーク全体の報酬地図を描いていくのです。
TLDR: Beras can’t read - クマでもわかるこの記事の要点 🐻
✅ LAZY Bera用 Boost/Incentive チェックリスト
チェック項目 | 確認すること |
✅ Vault選び | APRの高さだけでなく、Bribeの有無・TVL・BGT効率を見る |
✅ Validator選び | 自分が預けたVaultに多くエミッションを配分しているか確認 |
✅ Boost先 | すでに人気のあるValidatorか、これから化けそうな穴場か? |
✅ Bribe流れ | どのValidatorがどのVaultからIncentiveを受け取っているか |
✅ 組み合わせ | 「Vault × Validator」の相性が最大化されているか? |
- 報酬は降ってこない。選び、流し、動かすもの。
- Boostで報酬の舵を取れ、Incentiveで報酬は引き寄せられる。
- APRだけ見るな。BGT効率とBribeの流れを読め。
- PoLは、戦略と行動がリターンになる時代を始めた。
- 動いたBeraが勝つ。静かなBeraには何も起きない。
PoLは、報酬を“選ばれるもの”から“選ぶもの”に変えた。各クマがその流れを決めるチェンジメーカーになる番だ。